ハイパフォーマーに必要な「経験から学べる環境」とは

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モナッシュ大学准教授渡部幹さんによる、マレーシアの多様性から何を学べるかをテーマにした連載。「仕事ができる人」は何をどうやって学んでいるのだろうか。日本人に足りない「経験」をどう学ぶかについて語ってもらった

 

このコラムでは、マレーシアから学ぶべきこと、をテーマに、日本人として「国際化の先輩」であるマレーシアから何を学べるかについて書いている。

 

先日、あるビジネスの資料を読んでいるとき、興味深い報告があった。人が仕事を中心にどんな「学び」をするか、についてのものだ。当たり前だが、生きていくのに必要な知識やスキルは、教室の中でだけ学ぶわけではない。仕事や社会関係の中でも学ぶ。

 

「ハイパフォーマー」に共通している学び方とは

 

報告によると、ほとんどの場合、人が生きていくために重要な知識やスキルの7割方は、「体験」によって得ているという。学校や仕事の研修など「座学」で学ぶのは1割程度に過ぎない。残りの学びは、仕事とは別の人間関係や社会関係の中から学ぶ。

 

さらにハイパフォーマー、つまり「仕事のできる人」がどんな学び方をするかを調べた結果、いくつかの特徴が浮かび上がった。

 

第1に、たとえ1割程度しかないとは言え、ハイパフォーマーは学校での勉強をしっかりしている。正確な概念と論理性を学ぶことは、後々のビジネスに役立つ。また勉強すべきときに、自分を律してやれるという、自己管理能力の訓練にもなる。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズは別として、多くの成功者は高学歴だ。

 

だが一方で、高学歴だからビジネスで成功するとも限らない。座学で学んだ知識を実生活で活かせる、「知恵」を持ち合わせていることが重要だからだ。優秀な人は、机上の論理を仕事に役立てることに長けている。

 

第2に、優秀な人は、自分が学ぶための社会環境をうまく作ることができる。例えば、仕事を教えてくれる優秀な上司や先輩と良好な関係を作り、彼らの指導のもと、効率的に学ぶことができる。

 

そして、最後に、仕事上自分が経験したことについて、彼らから効果的なフィードバックをもらい、自分でもリフレクション(内省)を行う。これを何千回と繰り替えして、知識と知恵を獲得していくのだ。当然、その中には失敗も多くある。それを活かせるのが優秀な人だ。

 

「ダメな上司」に潰されないために大事なこと

 

これらのパターンは、文化や言語を問わず、だいたい同じだそうだ。当然日本人にも当てはまることになる。

 

筆者は、日本人は、座学は世界でも有数のレベルの高さを誇っていると思う一方、効果的なフィードバックやガイダンスを得られるようなオプションが少ないように感じられる。多くの場合、そういったフィードバックを得られるのは、良い先生、良い友人、良い上司、良い同僚からだ。日本社会では、これらのうち、自分で選択できるのは、「良い友人」だけで、残りはほとんど所属した先での運で決まってしまう。

 

コンサルタントをやっている友人から聞いた話だが、日本の会社で優秀になれるポテンシャルを秘めた人材はゴマンといるが、ダメな上司に潰される人材もまたゴマンといるという。それは人ひとりの人生を潰すことになりかねない。

 

こういったことを避けるには、自分の(生涯の)学習を支えてくれるような、人々に逢えるような状況を、自分から選べるようにすること、そしてそこで効果的な選択ができるような訓練をすることが重要となる。

 

どうしたらそのような状況を選ぶことができ、自分にとって良いフィードバックをもらえる人材を探すことができるのだろうか。筆者が提案するのは、以前からこのコラムで書いている通り、「社会的ビクビク人間」から脱し、新しい人々と本当のコミュニケーションをとろうとすることだ。

 

日本的ムラ社会の原因は「社会的ビクビク人間」

 

いつも付き合っている人々との関係は大切にすべきだが、新しい人々との出会いを制限する必要はない。それが異文化、異言語の人でも同じだ。マレーシアというダイバーシティ豊かな国では、人々の考え方も視点も多様だ。そういう人々からのフィードバックは、日本にいては到底得られないような貴重なものも多い。事実、筆者はこちらに来てから、日本でもアメリカでも得られない、面白い考えやアイディアに多く出会っては感動している。

 

自分自身、そして自分の子供たちの可能性を拡げるためにも、新しい関係を作り、新しい人々の意見に耳を傾け、日本にいてはできないような新しい「学習体験」を試みてはいかがだろうか。

 

 

渡部 幹(わたべ・もとき)
モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授
 
UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。社会心理学を中心として、社会神経科学、行動経済学を横断するような研究を行っている。また2008年に共著で出版した講談社新書『不機嫌な職場』が28万部のヒットとなったことをきっかけに、組織行動論、メンタルヘルス分野にも研究領域を拡げ、企業研修やビジネス講師等も行っている。
代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。

 

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