【現地レポート】歴史的な政権交代が起きた

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「津波」が現実のものとなった。第14回マレーシア総選挙では、国民戦線(BN)が有利という予想に反して、92歳のマハティール元首相が率いる希望同盟(PH)が勝利した。1957年の独立以来、初めての政権交代となる。10日の街の様子をレポートした。(マレーシアマガジン=野本響子)

 

与党連合率いるナジブ氏の汚職疑惑に国民がノーを突きつけた今回の選挙。選挙戦中はマレーシア各地では与党BNの旗が多かった。マスコミの事前の予測では与党有利。この結果に驚いた人も少なくないだろう。

 

高い投票率と政治への関心

 

マレーシア人の政治への関心の高さには驚く。マレーシアでは、英字紙を読んでいるだけではなかなか実情が掴みにくい。国民の多くがWhatsappなどのチャットグループで、盛んに政治的な投稿をする。筆者もいくつかのグループに参加しているが、投票日前後は、このほとんどが政治的な声明で埋め尽くされた(ただし、外国人の政治参加は認められていない)。

 

投票率は80パーセント近く。投票日が水曜日で、故郷に帰らなければ投票できない人が多いのにも関わらずだ。フェイスブックには投票済みを示すインクのついた指をアップする人が相次いだ。小学生ですらクラスで政治の話題が出る。人々の政治的な関心への深さや、成熟度合いには敬意を評したい。

 

選挙の翌朝、10日の朝に会ったマレーシア人たちの多くは、政権交代に肯定的だった。セランゴール州で活動していた野党の熱心な支持者は「62年ぶりの政権交代となった。勝利の瞬間には涙がでた」と話す。一方で、「マハティール氏も元をたどれば同じ政党だ。政権交代でも国が良くなることはないだろう」と冷静な声や、「公約だった消費税の撤廃が本当に行われるか注視したい」と現実的な声も聞かれた。

 

緊迫の投票日も、トラブルは少なかった

 

直前にフェイクニュース対策法案が成立。マハティール元首相の乗る予定の飛行機に不具合が起き、これを告発したことで氏が警察に調査される一幕も。インドネシアからのエアアジア便が欠航になり、与党の関与を疑う声が出るなど、緊迫する中で投票日となった。マレーシア人には暴動や小競り合いを心配し、警告する人も少なくなかった。しかし国民戦線側も10日早朝に民意を認める声明を発表。選挙の不正については否定した。

 

10日は急遽休日になり、クアラルンプールやペタリン・ジャヤでは人出も交通量も少ない印象だ。一方で、Whatsapp上では、今もマハティール氏の演説動画や、スルタンの動画、人々への注意事項などが次々とシェアされている。現在、大きなトラブルは伝えられていないが、マハティール氏の首相就任まで予断を許さないと警告する人もいる。このまま、平和裡に政権交代が進むことを期待する。

 

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