エシカル・ビジネスにこだわる女性起業家、エレイン・ホン・前篇

 

マレーシアの若手起業家はどのように活躍しているのだろうか。今回は、社会起業家のエレイン・ホンにスポットを当てて、マレーシアの若い世代の考えに触れてみよう。前後編でお送りする。(マレーシアマガジン=渡部明子)

 

中華系マレーシア人のエレインは、10歳からの夢を実現し、ファッションデザイナーの道を歩み始めた。パリで学び、パリ・ファッション・ウイーク、ロンドンの著名デザイナーの下で修業を積む。世界的有名ブランドでの職を得る。ところが、とあるきっかけでデザイナーズブランドを支える深刻な労働問題を知り、精神的に病みかける。当時、マレーシアで唯一のエシカルファッションを扱うビジビジ・イニシアチブと出会い、新たな拠りどころを見出す。

 

 

筆者がエレイン・ホンと出会ったのは、今から3年前の2016年。エレインが、大手企業のデザイナー職を辞し、マレーシアの社会企業“ビジビジ・イニシアチブ”で、専属デザイナーとして勤務し始めたころのことだ。

 

ある日、ビジビジの主要商品であるシートベルト製バッグを購入するため、いつものように工房を訪れたところ、入社したてのエレインが応じてくれた。お気に入りのバッグを見つけ購入する筆者にエレインは、次のように声をかけた。

 

「厳重に検品していますが、もしパーツに不具合が生じたり、壊れるようなことがあったら、こちらにお持ちください。きちんと修理してお返ししますので、簡単に処分しないでください」

 

最後の一言に、深い意味と強い思いが込められていたことを知ったのは、彼女がビジビジから独立し、エシカルファッションブランド“Chapters(チャプターズ)”、さらに2つ目のビジネスである、オーガニックコットンを用いた生理用品会社“enya(エンヤ)”を立ち上げた後のことだった。

 

 華やかな経歴を有するエレインがエシカル・ビジネスにこだわる理由は何か。2回に分けてお伝えする。

 

大手アパレルのデザイナー時代に受けたショック

 

 エレインがファッションデザイナーになると決めたのは10歳のとき。大学ではファッションコースに進学。クアラルンプールならびにパリの大学?で、生地、デザインを専門的に学ンダ。パリ・ファッション・ウイーク、イギリスの著名デザイナーであるシャルロット・テイラーの下で修業を重ね、世界的有名ファッション誌が有するアパレルブランドでの職を得る。「もちろん、大手ブランドへの就職は嬉しかったです」とエレイン。

 

世界で展開する大手ブランドは、多彩なラインナップを有し、多くの作品が次々と展開されるため、倉庫には次々と在庫が積み上げられる。そのため、専門知識を持つ人たちはひと月に一度、「将来売れるもの、売れないもの」を判断・振り分ける作業に駆り出される。エレインも例に漏れず、振り分け作業を手伝うこととなった。

 

ビニール袋に入った服を一枚一枚取り出し、チェックするというこの作業。まずは、取り出した瞬間の化学薬品の臭いに、倒れそうになったと言う。「生地に濃い色を染め付けるのは容易ではなく、安価に仕上げたい場合、有害な化学薬品を大量に使用する手段を取るのです」。また、生産後、外気に触れることなく長期間袋に入ったままの服は、取り出して広げると、生地が簡単に裂けてしまうこともわかった。「すべて化学薬品のせいです」。
また、整理が進むにつれ、「将来売れない」と判断された服が山のように積み上げられていく。それらはバーゲン品として一度は店頭に並ぶが、そこで売れ残ったものは処分されることを知った。

 

 「生地に化学薬品を散布する工程について調べたところ、その映像に大きな衝撃を受けました。低賃金で働く労働者がマスク姿で作業しているのですが、マスクをしても、完全に吸引を妨げることはできません。また、それらの薬品が皮膚に付着した場合、日々の蓄積により、重大な健康被害を引き起こすこともわかりました」

 

さらには、バングラデシュで起きたRana Plaza事件、児童労働など、大手アパレルメーカーによる安価な衣服の生産背景にある数々の社会問題の実態を知る。以来、それらインターネット上の映像や、目の前に積み上げられる大量の処分品の様子が脳裏に焼き付き、エレインは、夜寝付くことが出来なくなったと言う。

 

エシカル・ビジネスへの道を自覚

 

 「自分のやりたかったことは、こんなことではないはずだ」。自問自答の日々。また、倉庫当番が回ってくる度に、心を殺すようになる。とうとうある日、「もう続けられない」と、勢いで上司に退職を宣言した。進むべき道はエシカル・ビジネスだと自覚する。「その頃、マレーシアでエシカルファッションビジネスを行っていたのは、ビジビジだけでした。すぐにビジビジ創業者に連絡、面接を受けたところ、即採用。本当にラッキーでした」。

 

 

 「いつかは自分のブランドを持ちたい」という思いを持ちつつ、ビジビジでは生きる道を見つけた喜びで大興奮の毎日だったとエレインは笑う。
 

 

 <日馬60周年記念事業をきっかけに、エレインはビジビジを独立する。後編に続く。>

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